毎年の「敬老の日」の前後、生活保護を受けるお年寄りたちに老眼鏡を贈り続ける眼鏡店が大阪府泉佐野市にある。3代にわたり、今年で50年目。プレゼントした老眼鏡は延べ3千個を超えた。
24日午前、泉佐野市役所の会議室に高齢者が次々と集まってきた。順番に視力検査を受け、10分ほどで真新しい老眼鏡を受け取った。小売価格だと1個1万円前後のものだ。4回目になるという女性(94)は「これで新聞もちゃんと読めるし、針に糸も通せる。買うとなれば大変なのでありがたいことです」と話した。
老眼鏡を贈っているのは1927年創業の「ヨシノ眼鏡(がんきょう)店」。民生委員をしていた創業者の故・吉野恒一(つねいち)さんが61年、「お世話になっている地元に何か恩返しをしたい」と市に相談して始まった。以来、2代目の健治郎さん(80)、3代目の勝さん(54)と受け継がれてきた。
この時期になると、市が生活保護を受ける65歳以上の市民に案内を送り、希望者を募る。当初は毎年40人ぐらいだったが、社会の高齢化と生活保護世帯の拡大に伴って年々増加。2001年には80人を超えたため、翌年から奇数月生まれの人と偶数月生まれの人に分けて交互に希望を募るようになったが、それでも最近は70人前後になる。
会社は大きくなり、市外も含めて6店舗、社員30人近くを抱えるまでになった。勝さんは毎年、老眼鏡を贈る場に若い社員を連れてくる。客との接し方を学ぶ場にしてほしいと考えているからだ。
勝さんは祖父の恒一さんから「お金をもらわなくても同じお客様。どんな時も手を抜いてはだめだ」と諭されたことを覚えている。「50年できたのは、商売を続けてこられた証し。これからも頑張りたい」(千葉正義)
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