Saturday, September 25, 2010

Phewが15年ぶりソロ エルビス・寺山修司をカバー

個性際だつ歌声で幅広いファンをもつシンガーのPhew(フュー)が、ソロ名義では15年ぶりになる新作アルバム「ファイヴ・フィンガー・ディスカウント~万引き」を出した。エルビス・プレスリーから寺山修司の歌まで、すべてカバーの異色作だ。
 1970年代末に日本最初期のパンクバンド、アーントサリーでデビュー。その後は坂本龍一やドイツのミュージシャンらとジャンルや国境を超えて活動してきた。近年はバンドMOSTなどでコンスタントに作品を出してきたものの、ソロ名義は95年以来、途絶えていた。
 「2000年代は、私のような歌声が届きにくい時代だと感じていた。時代や聴衆と共鳴する声ではない。元祖KYっていうんでしょうか。物心ついた頃から『場の空気を読めない』と言われていましたから」と笑わせる。
 本作でも、冷淡ではないがどこか突き放したような、我が道を行く声質と歌唱が屹立(きつ・りつ)している。「言葉からこぼれるものはたくさんある。世界は、単純に言い切れるもので成り立っていない。でも今は声の大きい者勝ち、賛同する人が多いことを言った者の勝ちっていう風潮ですね。そんな下品な時代に対峙(たい・じ)する気もある」
 収録曲はライブで歌うエルビスの「Love me tender」や寺山作詞の「時には母のない子のように」、中村八大作曲の「どこかで」「素晴らしい人生」、加藤和彦の「ふしぎな日」「青年は荒野をめざす」など意外な選曲だ。
 「オリジナル曲とは別の風景を、アルバム全体を通して見せたい」とPhewは言う。その風景とは「希望」だと、照れくさそうに話した。
 録音にはジム・オルーク、山本達久、山本久土、石橋英子、山本精一、元アーントサリーのbikkeが加わった。10月1日には録音メンバーがほぼ全員そろっての記念ライブが、東京・渋谷のクラブクアトロである。(近藤康太郎)

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