Saturday, September 25, 2010

残念な人の思考法 [著]山崎将志

残念」は時代のキーワード
 「残念」というのは、いまの時代を象徴するキーワードなのかもしれない。やる気も能力もあるのに、仕事がうまくいかない人を「残念な人」と著者は呼ぶ。一生懸命頑張っているのに、その頑張りがあさっての方向を向いてしまっているからだ。最初から頑張っていなければ、単なる自業自得のダメな人で終わる。そうではなく、頑張っているのに、それでも報われない。だから残念なのだ。
 著者は身の回りの残念な人のケースを、具体的なエピソードであれこれ紹介していて面白い。だがサラリーマン社会の残念ケースにとどまらず、実は「残念」は日本社会そのものでもある。いまや日本が「残念」なのだ。
 ライブドア事件が起きた2006年当時の東京地検特捜部長は就任会見でこう述べている。「額に汗して働いている人々や(略)法令を遵守(じゅんしゅ)して経済活動を行っている企業などが、出し抜かれ、不公正がまかり通る社会にしてはならないのです」
 振り返ればゼロ年代は、日本がグローバリゼーションに完全にのみ込まれていった10年間だった。パラダイムは転換し、人の生き方も変容を迫られる。
 額に汗して働くことこそが本当の労働で、「出し抜く」ような行為をしている人間はけしからんという倫理。それはだれもが豊かになれることを夢見ることができた高度成長時代の牧歌的な倫理でしかない。いま、いくら額に汗して働こうが、なんの戦略もない努力ではその汗も無駄に終わってしまう時代になったのだ。戦略と戦術をていねいに構築し、どの方向にどのような手段で向かうかを真面目(まじめ)に考えなければならないのだ。
 著者は、能力とやる気に加えてプライオリティー(優先順位)が必要だと説く。結論はあまりに単純すぎて首肯できないが、逆に言うと「残念」から脱するのはそれだけ難しいということの裏返しかもしれない。

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